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奴は何も答えず、じっと私の顔を見つめている。
すると、登場以来ずっと黙っていたでっせの悪オヤジが、奴を擁護するように、私に対して牙を剥いてきた。
「自首しろでっせ?チビっ子探偵が偉そうに!燕様がどんなに辛い思いをしてきたか、オタクにわかるんやすか?何不自由なく生活してそうな、イマドキの"新卒女子"なんかに」
「何ですって!?あんたみたいなヒゲオヤジに、私の何がわかるのよ?ゲームに登場するザコキャラと似たような見た目のくせに!」
私とオヤジが、お互いに子どもっぽい言い争いをする。オヤジがまたも燕の味方をした。
「オタクとの喧嘩なんかどうでもいいやす。燕様は昔から苦労人なんでっせ。両親に捨てられ、学校では理不尽なイジメに遭い、精神を病みやした。それでもポメラニアンであるわいを、赤ん坊の頃から飼って可愛がってくれやした。本当は優しい心の持ち主なんでっせ!そんな飼い主様のお役に立とうと、わいは今回の計画のお助け役を担ったんでっせ。元々イジメをする奴らが悪いんであって、燕様こそが被害者なんでっせ。死ぬほど苦しんだんでっせ。社会や人間を恨むのも、当然やすよ!」
オヤジは口癖である"でっせ"や"やす"を連発しながら、絶対服従と言わんばかりに、飼い主である燕を全力で守ろうと必死だった。
奴はそんなオヤジと無言で目を合わせ、静かに頷いた。奴らは固い信頼関係で結ばれているのだと、私は理解した。
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