カタストロフィ

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          2            雨    「燕!!」 私は突然ナイフを自分の腹に刺し、倒れてしまった燕の元へ急ぎ、彼を抱き寄せた。腹部は真っ赤な血で染まり、口からも血を流している。呼吸も荒い。 まさか、自殺しようとするなんて……。 迂闊(うかつ)だった。 警察が確保してくれる予定だったのに、未だに誰も来ない。何をやっているんだ? 「燕、どうしてよ?最初から自殺するつもりだったの?死ぬ前提で、この事件を起こしたの?」 私が泣きながら必死に尋ねると、燕は刺さったままのナイフの柄を右手で触りながら、ゆっくりと答えた。 「あ、ああ……。し、死を覚悟してこ、この無差別大量殺人をけ、計画していたんだ……。さ、最後にでっかいは、花火を打ち上げてやろうって……無関係な人間をま、巻き込んで死んでやるって…か、"拡大自殺"って言うんだがな。まあじ、事件発生からま、丸一日以上た、経ってからの自殺だが、だ、『W』での反応もみ、見たかったからな、 ゲホゲホッ!!」 燕は苦しそうにしどろもどろに話し、しゃべると痛みが酷くなるのか、血を吐いてしまった。それでも最後の力を振り絞って、私に何か言いたげだった。 私は彼の頬を優しく触り、発せられる言葉に耳を傾けた。 「さ、桜みらい。き、君に伝えなければな、ならないことがいくつかある……。ま、まずは俺が出題したな、謎解きの答えの"112"の意味だ。あ、あれはな、じ、実は"11月2日"のことだったんだ。じゅ、11月2日はし、"死者の日"と言って、め、メキシコでは死者を(しの)ぶ、た、大切な祭りなんだ。が、ガイコツのか、仮装をして、街中をあ、歩くんだぜ。俺は死ぬつもりでずっとう、動いてきたから、この死者の日にな、何かえ、縁があると思って、これを先に答えにして問題をつ、作った。何とかと、解いてくれてた、助かったぜ……」 「うん。そうだったんだね、わかった」 燕は瀕死の状態で、謎解きの答えである112が、11月2日の死者の日を示すことを告げた。私は彼がいつ絶命してもおかしくないことを察し、彼の手を握り、続きを聞いた。
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