2/5
前へ
/63ページ
次へ
「無理に忘れようとしなくても、いいんじゃないかな。まだあれから3週間だしさ。私も高校時代の彼氏と別れて失恋した時、悲しくて1年くらい忘れられなかったよ?みらいは(あいつ)のことが好きだったんでしょ?それなのに自殺されちゃうなんて。とんでもない事件を起こしたくせに、死に際に好きとか、"何なの?"って私なら思っちゃうけど、優しいあなたなら、救えなかった自分を責めちゃったりもしてるわけだよね。そりゃ辛いよ。"数年"は引きずるかもよ?でも。それまで好きなことやってればいいじゃん。ミステリー小説読んだり、美容とかファッションとか。そうだ、私と旅行しようよ。"女子旅"。佐賀行ったことないんだ、今度案内してよ」 依未は落ち込む私に対して、無理に彼を忘れる必要はなく、時間が解決してくれると、自身の失恋体験を例に上げて励ましてくれた。そして少しずつでも趣味を楽しみ、リフレッシュしていけばいいと。 「そ、そうだね。乗り越えられるかな、私でも……。うん、2人で行こう。佐賀はのどかな田舎だよ。"吉野ケ里遺跡"とかいいよ?弥生時代の環濠(かんごう)集落が見学できるの。それに地元の伊万里市の橋には、陶磁器のレプリカが飾ってあるのよ。2022年に、西九州新幹線が長崎から武雄温泉まで通ったし、交通の便もよくなってるわ」 「いいじゃん!歴史探訪や温泉巡りも良さそうだね。ついでに福岡も寄って、美味しいもの食べてこよう!」 「うん。寒くなる前に行けたらいいね。励ましてくれてありがとう、依未」 依未に私の出身地である佐賀県に旅行に行きたいと言われ、とても嬉しくなり、佐賀の魅力をいくつか紹介した。お盆も帰る予定はなかったので、近いうちに実家にも顔を見せに行きたい。 それにしても彼女には、本当に助けられている。辛い時でも誰かが側にいれば、悩みを打ち明けたり、話を聞いてもらうことができる。やはり持つべきものは、"信頼し合える友達"だ。私も、彼女のことをこれからも大切にしていきたいと思う。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加