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         2            転機 2025年10月16日、木曜日。 今日は燕の誕生日だ。生きていたら、23歳になっていた。私は今朝、空に向かって無言で手を合わせた。 前代未聞の無差別大量殺人として世間を震撼させた、『サイマーフェス大規模爆破事件』からちょうど2ヶ月。最終的な死者数は、既に8月下旬に "1万2034人"と確定している。阪神・淡路大震災の倍近い数の尊い命が、あの一瞬の爆発で奪われたことになる。 SNS『W』では、今なお犯人の石動燕に対しての批判や怒りのポスト、コメントが殺到している。これだけの大惨事を起こした挙げ句、罪から逃れようと自殺したのだから、当然の結果だろう。 一方で私やでっせの悪オヤジの情報は、少なくとも今まで見た限りでは出回っていない。SNSは一旦新情報が出ると、あっという間に拡散されてしまうため、余計なストレスを抱えていないことが、せめてもの救いだ。 話は変わり、私の近況にも変化があった。 9月末で、勤めていたペットフード製造の会社を退職した。仕事自体は好きだったが、同僚が事件を起こし、その影響からの体調不良でほとんど出勤できなくなってしまい、この環境に居づらくなり、"転職活動"をすることに決め、わずか半年で辞めることになった。 次に何がやりたいか____。 それは"イジメや自殺を減らすための取り組み"だ。 事件後、燕のことがどうしても忘れられない私は、彼が犯罪者になってしまった根本原因であるイジメへの対策と、彼が自ら命を絶ったことを機に、自殺防止の支援が何かできないか、自分なりに探っていた。 イジメによる自殺も多いため、この2つは切っても切れない関係にある。そして私たち20代の死因の1位は自殺であり、社会問題となっている。これらを減少させない限り、理想の世の中とは言えないのではないか。 希望する方向性としては、NPO法人の職員になり、悩みを抱えている人の相談を受け、少しでも助けになれるようにしたい。それに向けて、本やネットを使って心理学を勉強中だ。
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