秘密

2/6
前へ
/63ページ
次へ
俺は様々な理由から、この"社会"と"人間ども"を強く恨んでいる。 お前らのせいで人を信用できなくなり、性格が歪み、俺を攻撃しない動物や植物しか愛せなくなった。 人間なんて大嫌いだ。 この社会も思い通りにいかないし、つまらない。居場所なんかどこにもない。 もう疲れた。何もかもどうでもいい。 死にたい。 だったらいっそ死ぬ前に、お前らも巻き添えにしてやる!! 俺を苦しめてきた奴らはもちろん許さない。だがそいつらを一人一人抹殺している暇はない。人間関係から足がつき、いずれ警察が俺に辿(たど)り着いて捕まるのがオチだからだ。 そんな自滅をやらかすよりも、もっと"どでかい花火"を打ち上げてやりたい。"無差別大量殺人計画"は、あの苦しかった思春期からずっと企んできた、誰にも明かしていない"秘密の欲望"だったのだ。 "ジョハリの窓"という心理学用語がある。自己分析やコミュニケーションに役立つ考え方であり、自分に対する理解を、自身と他者から見た視点でそれぞれ、開放、秘密、盲点、未知の4つの窓に分類する。そのうちの秘密の窓は、"他者が知らない、自分だけが知っている自分"ということなので、俺みたいにいわゆる"隠しごと"が多い人間はこの領域が広い。他人との交流が下手なのも、自己開示を極力しないようにしているから、相手も俺が何を考えているかわからないという理由で関わりにくいのだろう。今回の計画のことはもちろん、それに至るまでの過程も、大学の同級生、会社の同僚や上司には一切話していないのだから。 それはさておき、俺はでっせの悪オヤジと相談し、この素晴らしい惨殺計画を実現するため、殺害方法や場所、日時などを細かく決めている最中だった。 殺害方法は、破壊力が凄まじい"特殊爆弾"をオヤジが用意してくれているらしいので、その爆弾と連動している操作機に時間と場所を入力するだけで、不特定多数の人間を爆死させることができるハイテクなシステムを利用する。遠隔操作で殺人を行い、証拠なども何も残らないため、警察が俺を疑う可能性はまずないと安心している。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加