秘密

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「オヤジ。場所に関してなんだが、今日同期の女子社員と食事しながら話してて、いい"ソフトターゲット"(警備が手薄で、テロに狙われやすい場所)を見つけたんだ」 「ほう。どこでっせ?」 「さいたま市で行われる音楽フェスだよ。8月16日に開催される、最大2万人以上もの人間どもが密集してライブを楽しむイベントだ。沢山のアーティストが集結するらしい。俺はそんなものには興味がないが、大量の"虫けら"をまとめて皆殺しにするにはうってつけの環境だと思わないか?おまけに若い男女が大半だろうから、俺の"復讐対象"にも合致するしな!」 特に同世代に対して強い恨みを持つ俺は、気持ちを高揚させてオヤジに伝えた。 「いいでっせね!爆弾の威力は、万単位の人数でも粉々にできるほどの絶大な破壊力を兼ね備えておりやすので、前代未聞の大量殺人が実現可能でっせ!仮に死なずとも、重傷を負うなり後遺症を抱えるなりで、"生き地獄"を味わうことになる人間が多発するでっせ!この事件の"首謀者(しゅぼうしゃ)"である燕様は、その惨劇を嘲笑(あざわら)うように、自宅でのほほんとポテトチップスでもつまみながら傍観していればいいだけでっせ!!」 でっせの悪オヤジが、相変わらず"でっせ"を連発しながら犯罪の恐ろしい予測を口にし、楽しそうに空中で左右に揺れた。この魔物も俺に劣らず、名前の通り相当な"悪役キャラ"である。 未来のある若者を一瞬にして大量に失い、日本中が悲劇のどん底であたふたしている中、当の犯人が何食わぬ顔で優雅に菓子を食ってる姿……あまりにもふざけすぎだが、犯罪者の視点で考えれば優越感に浸れてイイねえ。
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