秘密

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「ははは、そりゃいいや。"絶望"に(さいな)まれ、もがき苦しむ虫けらども、ざまあみろや!予期せぬ非常事態に対して、何もできない無力な大人や政府もな。俺が日本、いや世界でダントツに人を殺した"英雄"だってことを世間に思い知らせてやるよ!報道だけしか能がない"マス"や、頭の硬い"警察(イシアタマ)"たちにも挑戦状を出してやるぜ!更には最近のSNSでのトレンド入り、炎上に拡散……お前ら"ネット民"も大事件の凶報に目が覚めるだろ(笑)。思う存分、祭りのように騒げ!楽しすぎる、想像しただけで笑いが止まらないぜ、あはははは!!」 「そうでっせ、燕様は英雄でっせ!お互いにテンション上げていきまっせ!一緒に音楽フェスを"血の海"に変えてやりまっせ!でへへへへ!!」 俺とでっせの悪オヤジの"共犯コンビ"は、狂ったように笑いながら意気投合した。 そう。 俺は英雄だ。 原爆投下や組織的な大量虐殺を除き、万単位の人間を一瞬にして殺害する事件など、今までの歴史を振り返っても前例がない。 爆弾を用意するのはオヤジだが、実際に機械を操作するのは俺で、現時点では何人死ぬのかが正確にはわからないにせよ、そのすべての人間を殺したのは"主犯"である俺になる。もちろん捕まれば死刑確定だし、今後もこれほどまでの大がかりな大量殺人は物理的に誰にも起こせないだろう。 つまりこの犯罪は後世にも語り継がれ、歴史に刻まれる大惨事となることは言うまでもない。それ自体が俺の狙いであり、世間に対する"挑戦状"を出すことも、死を覚悟した上で犯罪を楽しむ者においては、"必須の儀式"なのである。 このような異常な、俺の隠れた悪の素顔も、長年共に暮らしてきた愛犬の福スケには、もしかしたら見抜かれていたのかもな。だから奴がでっせの悪オヤジに姿を変えてしまっても、俺の考えていることはお見通しなんだという風に捉えておこう。生前の福スケは、こんなふてくされて社会に背を向けた俺にも懐いてくれる、純粋なオスだったけどな。でもその大切な唯一の味方である福スケを失って、俺自身の"殺人願望"に拍車がかかったことも、また事実だ。
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