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俺には歌うことしか出来なくて、歌って生きていくことが人のためになるのだと本気で考えていた。
一人でも多くの人間に、俺の歌を広めることが善だと思っていたんだ。
だからお前が俺を支えてくれていたことも当然だと思っていたし、感謝という概念もなかった。
毎日毎日、一銭にもならない唄を歌っては、疲れたような顔をして、当たり前のようにお前の作った飯を食っていた。
お前が働いた金で買った食材で作られた料理をだ。
今になって分かったことがある。
一人ぼっちになって、気付いたことがある。
お前は馬鹿だ。こんなヒモ男を養って。
でもそれ以上に俺が馬鹿だ。ただの現実逃避野郎だ。
ギターの練習もせず、腹筋やボイトレに精を出すでもなく、音楽の見聞を深めるでもなく、ただただ同じ唄を歌っては、それが最高なのだと信じ込んでいた。いや、きっと面倒だからそういうことにしていた。
普通に働くことをしたくないから、俺の天職は歌うことなのだと、そういう設定にして生きていたんだ。
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