見えない魚雷

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 ある日、丈一郎(じょういちろう)は海を見ていた。ここは漁師町で、漁船を多く見かける。丈一郎の家も漁師一家で、将来は漁師になろうと思っている。  と、そこに尊(たける)がやって来た。尊の家族も漁師で、尊自身も漁師だ。尊は少し悩んでいる表情だ。何があったんだろう。 「どうしたんだい?」 「昨日、漁に出てたら、何かがぶつかったような衝撃を感じたんだ」  尊は異変を感じていた。昨日、漁に出ていたら、何かがぶつかったような感じがした。何がぶつかったのかは全くわからない。 「船は?」 「それが無傷なんだよ。けっこう大きい衝撃だったのにな」  だが、実際に船を見たところ、全く傷がないのだ。明らかにおかしい。これだけ大きな衝撃があったのに、傷が全くないなんて、おかしいな。 「僕も気になるな」  丈一郎も気になった。ひょっとして、幽霊船だろうか? だが、ここに幽霊船のうわさなんてなかった。 「どうしてこんな事が起こるんだろう」 「僕もわからないよ」 「うーん・・・」  丈一郎は考え込んでしまった。尊は首をかしげている。2人とも、その理由が全くわからないようだ。  尊は家に戻っていった。もう今日は家に帰ろう。家に帰って、気持ちを落ち着かせよう。  帰り道、丈一郎考えていた。あの衝撃は、何だろう。全く見当がつかない。それに、傷が全くないなんて、おかしいな。 「大きな衝撃なのに、傷がないって」  と、丈一郎はとある井戸端会議を聞いた。井戸端会議なんて、そんなに見ないのに、どうしたんだろう。 「知ってる? この辺りって、回天の基地があったんだって」  回天とは戦時中に日本軍にあった、潜水艦で敵艦に体当たりをする部隊の事だ。丈一郎は首をかしげた。回天の事を全く知らない。神風特攻隊は知っていても。 「それは知らなかった」 「最近、回天の幽霊を見るんだよ」  主婦は少しおびえていた。最近、回天で亡くなった兵士の幽霊を見るのだ。何かされそうで怖いので、無視しているという。 「えっ、本当?」 「うん。不吉ね」 「私もそう思う」  丈一郎はその話に聞き入っていた。この漁師町に、そんなのがあったとは。まさか、あの衝撃って、幽霊が原因だろうか? いや、そんなはずがない。 「ここって、こんなのがあったんだ。でも、回天って、何だろう」  丈一郎は帰っている間、考えていた。果たして回天とは、何だろう。船で感じる衝撃に関係があるんだろうか?  翌日も丈一郎は海を見ていた。海では尊が漁師をしている。周りには漁をしている船はいない。穏やかな日中だ。今日もこうして穏やかな日々が続くんだろうと思っている。  と、尊の船に異変が起きた。揺れている。何が起こったんだろう。丈一郎はじっとその様子を見ている。 「あっ、尊・・・」  尊の船は転覆しそうなほど揺れている。海は全くしけていないのに、何があったんだろう。 「えっ、尊! 尊!」  と、尊の船の周りから男が出てきた。その男たちは軍服を着ている。まさか、回天の兵士の幽霊だろうか? 「何だあれ・・・」 「な、何をする!」  尊は抵抗するが、彼らはやめようとしない。彼らは不気味な表情で、尊を海に沈めようとする。  その時、誰かが丈一郎を捕まえた。突然の出来事に、丈一郎は戸惑った。 「や、やめろ!」  丈一郎は抵抗したが、全く離そうとしない。彼らは一体、何だろう。まさか、回天の兵士だろうか?  丈一郎は潜水艦に連れて行かれた。この中に連行されると思われる。でも、どうしてだろう。 「何に乗せる!」  潜水艦の出入り口が閉まった。無理やり乗せられた丈一郎は辺りを見渡した。様々な機器がある。まさか、彼らは回天だろうか? 「えっ、ここは?」 「発進!」  潜水艦は発進した。でも、どこへだろう。全くわからない。 「こ、これは潜水艦?」  実は潜水艦は1945年の太平洋戦争末期にタイムスリップしていた。丈一郎は全く気付いていない。  と、前方に敵の軍艦を見つけた。これに体当たりをしようというんだろうか? 「おい、戦艦を見つけたぞ!」 「えっ!? まさか、これは回天?」  えっ、まさかこれに体当たりするの? そんなの嫌だ。死にたくない。もっと生きたいのに。 「突撃!」 「えっ、えっ・・・。死ぬのは嫌だ!」  潜水艦は敵艦に突撃していく。敵艦は全く気付いていない。 「ぎゃぁぁぁぁぁ!」  潜水艦は敵艦体当たりをした。潜水艦に乗っていた人々は全員死んだ、丈一郎も含めて。  それ以来、丈一郎を見た人はいないという。
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