届くモノ

6/18
前へ
/198ページ
次へ
「いや、でも……」  さすがに結婚を考えている女がいるとは言えない。 「分かったわ。もういい」 「えっ、別れてくれるの?」 「違うよ。関口真梨香さんだっけ?」  涙を拭った沙菜が、ニヤリと口角を上げた。 「お前……」 「アタシのお腹に、貴くんの赤ちゃんがいることを、あの女に教えてあげるの」 「バカ野郎。そんなことさせるわけねぇだろ!」 「何よ。アタシに隠れてあんなブスと、お金目当てなんでしょ? でも、アタシがあの女にこのことを話したら」 「やめろ!」 「いやぁあああ!」  そして……。  我に返ったとき、貴弘は仰向けに倒れた沙菜に跨って、夢中で首を絞めていた。 「あっ……」  沙菜は大きく目を見開いたまま、ピクリとも動かない。 「うわぁああああああああ」  貴弘は飛び退けて、ガタガタと震えた。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加