①尚登と良

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尚登の言葉に陽葵は「え」とでも言いたげに視線を向けた、2畳もあるウォークインクローゼットの大半を埋めていた装備の数々を覚えている。 「良は家、どこ? 迎え行くわ。うちの車、出してもらえるかな。うるせえかな。村上さん、行くかな」 村上とはゲーム仲間だ。サバイバルゲームは荷物が多い、電車で運ぶのはとてもじゃないが無理がある。そのため車での移動が欠かせないが、尚登は車の運転は禁止されていた。決して運転技術を心配されてでははない、万が一の事故の時、「末吉商事の幹部が」などと報じられてはならないからだ。 「車必須? なら俺の車出すけど」 良が思わず言えば、尚登の目が輝いた。 「車、あんだ、助かるー」 じゃあ時間と場所は改めて、と尚登はスマートフォンを置いた。 「サバゲーねぇ……孝ちゃんたちも来る?」 たち、とは孝佑とあかねだ。だが孝佑は土日は書き入れ時で休めないと言い、それなら自分も今回はとあかねも辞退した。 「そっか……ナナとか誘ったら来るかな」
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