⑦面倒な仲人

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⑦面倒な仲人

その日は結納だった。 古式ゆかしく『正式結納』を行う。本来なら仲人が両家を行き来し結納品を収めるが、国井の負担を考慮し、高見沢家でまとめてやりましょうと提案したのは仁志だった。 仁志が陽葵の父、京助に問えば自身の結婚では仲人はおらず、結納も簡単に済ませてしまっていて、手順も判らないと聞いていたのものある。 きちんとするならば花嫁側の負担も増える、仲人を歓待する必要があるからだ。仁志の時は仲人は1往復半した、車は高見沢家で出すがそこまでする必要はありますかと言えば、則安も国井もいいだろうと了承してくれた。そして基本にのっとるならば新婦宅で行うべきだが、これも負担を考え高見沢家へ呼び寄せた、人が集まるスペースが十分にあるからだ。 歓迎の飲食もだが、衣装もだ。わずかな時間だが正礼装で行うのならば、それらも高見沢家になら揃っている。 仁志が京助にモーニングを、希美は陽葵に振袖を貸し出す。 振袖は希美が自身の結納の時に作り、着たものである。30数年前だが全く古さを感じないのが素晴らしいと思った、おはしょりがちょっと多く感じるのは、希美の身長に合わせたオーダーメイドだからか。 よかったらもらってと言われたが、それは陽葵は辞退した。これほどのものを置いて置ける場所はない、着る機会もないからだ。それを希美は笑顔で受け入れる、どうせ遺産としてあげられるものねと微笑んだ。
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