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国井が言えば、その向かいに座る則安もうむと頷く。
「結婚式場の方はどうかね」
国井に聞かれた尚登ははいと答えた。
「国井さんのお陰で会場の方はしっかり押さられていて安心しました。今後は夏頃から本格的にいろいろ決めていくことになっています」
答えながらも憂鬱になる、昨夜も菊田から電話があったのだ、羽織袴はいかがでしたというのだ。それはまたおいおいと電話は切ってしまった。
「ああ、当日が楽しみねえ、玉響さんはお食事もおいしいですし。陽葵さんは本当にお人形さんのようですもの、その隣に座れるなんて光栄だわ」
国井夫人が口火を切る。褒められたと陽葵も京助も笑顔になったが。
「本物の馬子にも衣装ね、とても素敵なお着物だわ。当日も華やかな衣服に身を包んでニコニコしていればいいんだもの、羨ましい限りね」
妻の言葉に国井もよしなさいと止めたが、本気でないように感じた。陽葵は返答に困り引きつった笑みを見せるだけだったが、尚登の額には青筋が浮かぶ。
「まあ、それは俺も一緒ですね。似合わな過ぎて恥ずかしいので、さっさと着替えてきてもよろしいでしょうか。そのまま帰らせてもらいますが」
乱暴に言ったが国井夫人は「まあ」と笑う。
「とんでもない、尚登さんはとてもお似合いよ、さすがは高見沢家のご嫡男だわ」
「陰口をたたかれんよう、身分に合った教養を身につければよいだけだ」
国井も尊大に言う。
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