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「教養だなんて、陽葵ちゃんはきちんと躾も行き届いたいい子ですよ、大学だって誰にも自慢できるよいところで学んでます。着物は私のものなのでちょっと浮いてしまっているだけで」
希美がフォローしていうが、国井はため息混じりに首を横に振る。
「国大出とは言うが、家柄は隠せん」
それには京助が体を小さくする、妻たちのことだろうかと肝が冷えた。
陽葵の母は、陽葵が小学生の時に病気で亡くしてしまった。その後再婚した妻が事件を起こして逮捕されていることは、事件の概要とと共に知らせてあると則安から聞いている。のちのち知られた時に文句を言われたくはないとのことで京助も納得した。しかし国井がどこか冷たいのはそのせいではいかと思ってしまう。
陽葵にしてもだ。どんな家柄を求めているのか判らないが、それはもう変えることはできないのだから反論はできない。しかし大学に関してはとても努力して、行けばきっといい未来があるからと担任に勧められて進んだのだ。それが無駄だったと言われたようで悲しくなる。
「躾とはいうが、しょせん希美さんの見立てでは、どうだか」
希美がしゅんと肩を落とせば、尚登の隣に座る則安が割り込んだ。
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