⑦面倒な仲人

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「その辺にしておけ、太雅(たいが)。その点ではお前とは馬が合わんな。うちは自由恋愛推奨だ、長い人生、共に過ごす相手は自分で選ぶべきだと思うだとからな。家柄や生まれなどはどうでもいい、むしろ何色にも染まっていない人のほうがいいというものだ。希美さんはよくやってくれている。陽葵さんも尚登が見込んだ女性だ、間違いない」 毅然と言えば、国井はでもと言って反論したが、国井の妻はうなだれて黙り込んだ。 則安自身は取り引き先の紹介で結婚をした。 幸せだったかと言わればそれに間違いはないが、妻に思い人がいたことを知っている。72歳で亡くなるまで、どこの誰とも明かさなかったが、その男と添い遂げていれば妻はもっと幸せだったのでは思ったことが何度もあった。 だから、息子も孫も、この人と思った人と結婚できたらよいと思っていた。息子の仁志はすぐに相手を見つけたが、孫の尚登は好きにさせ過ぎたのか、留学先から帰ってこないどころか交際相手もいないときた。いい年してと連日のように女性を紹介していたが、ようやくこの日を迎えられて、本当にいつ死んでもいいと思えるようになったのだ。 だが国井はなおも持論を語る、末吉ほどの会社がなどと言われ尚登はふんと鼻を鳴らし、陽葵の手を取り握り締める。 仲人は親も同然と聞いている、こんな親はごめんだと思うのはわがままではない。
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