①尚登と良

11/14
前へ
/164ページ
次へ
同じく自動拳銃を持っている女の顔を思い浮かべた。後日実際に誘ったが行くわけないでしょうとにべもなかった。逆に説教までされる、あなたがそんな場所に行くなんて本当に馬鹿なのかというのだ。拳銃は置いていけ、間違っても実弾を撃つなと言われた。そこまで阿保じゃないと反論したが、あなたは判らないとこれまた冷たく言われてしまう。 ナナには自分はどう映っているんだと、一度腹を割って話したいものだ。 そしてもう一人の親友と呼ぶべき男にも声をかけた。遊びに行こうと誘ったが、癖っ毛の青年も、そんな暇はねえとまったくつれない返事だった。確かに大学生をしながら幼子を抱えている身だ、『遊ぶ時間』なないのか。 まあ、今回はひとりで行くかぁ、と覚悟を決めた。 ☆ 山下のマンションに戻ってきた尚登は良の名刺を取り出す。 厚手の和紙で作られたものだ、凸版印刷による凹凸が美しい。明朝体の姓名に几帳面さを感じた、印刷されているのは姓名と、その下にあるURLだけとシンプル過ぎた。肩書きも社名も電話番号もない。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

343人が本棚に入れています
本棚に追加