⑦面倒な仲人

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「奥様が通っていらした当時はもう少しよかったようですが、最近はすっかり落ちぶれてしまったようで」 高校も運営の仕方ひとつでよくも悪くもなるものだ。 「私が高見沢家に来た最初の頃は高校生活の話題が出たこともありますが、今は避けているような気さえいたしますね。躾うんぬんに関してはご自分がずいぶん厳しく言われたようで、その仕返しかもしれません。あんな感じではご自身のご子息の相手にはどう接しておるのやら、ぞっとします」 うー、と言って身震いしてから、にこりと微笑んだ。 「なんてことは、私から聞いたとは言わないでくださいませ」 ルームミラー越しに言われ、尚登は微笑みオッケーと答えた。 身の上を知っても陽葵に八つ当たりするのは言語道断だが、則安の面目を立てるためにも仲人だけはやってもらうにしても、今後の付き合いは絶対断とう心に決めた。 先に京助を送り届けた、最寄り駅は川崎駅近くのマンションだ。 「今日はお時間をいただき、ありがとうございました」 尚登が身を乗り出し声をかければ、京助もこちらこそと答える。 「改めてふたりを見て──その、恥を忍んで言えば、羨ましかった」
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