⑦面倒な仲人

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終始ふたりはお互いの存在を確認し合っていた、目が合えば嬉しそうにするのが眩しかった。仲人夫妻に嫌味を言われ、京助は押し黙ってしまったが尚登は毅然と言い返していた──若気の至りといえばそれまでだが、なにがあっても陽葵を守る姿勢がはっきり判り、頼もしかった。 「こんな時で申し訳ないが言わせてほしい、陽葵を、よろしくお願いします」 助手席を降りようとしていた姿勢で頭を下げた、尚登ははいとはっきりと答える。 「陽葵、こんなお父さんで済まなかった。尚登くんと幸せになるんだよ」 前妻を亡くし、女親はいたほうがいいだろうと結婚相談所を通じて再婚したが、それが大失敗だった。陽葵を拒絶し、中学受験をさせ遠く九州へ追いやった。中高一貫だったので6年間のほとんどを九州で過ごし、卒業したらやっと帰ってくるかと喜んでいたのに、大学は都内の有名女子大に進み、そのまま一人暮らしをするという後妻の嘘を信じてしまった。そうとは知らず京助は授業料や家賃を払い続けていた。その金が何になったのか、全額は判っていない。 末吉商事という日本でも指折りの大企業に入っていたと知ったのは、尚登からだった。交際を知らせてくれたのだ。尚登の存在を後妻が知ると、相手は自分の娘をふさわしいと引き合わせるために陽葵を手にかけ──逮捕された。 どうしようもない女を選んでしまった父を、陽葵は許した。
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