⑧ブライダルフェアにて

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「ご無理を承知で申し上げますが、宇野と二人体制で関わらせはいただけないでしょうか」 「えー?」 尚登との声は遠慮ない。 「菊田から直接の連絡はいたしません、宇野のサポート役です。高見沢様は宇野になんなりとお申し付けくださいませ」 「……まあ。そういうことならいいですけど」 尚登は了承したが、やはりしっかり断ればよかったと臍を噛むのは次に会った時だが、それは別の話となる。 宇野が早速こちらへとふたりを案内した、その後ろ姿を三人は見送る。 「まあ、菊田君もほどほどに頼むよ。あとは宇野君に任せて」 言われてなおも菊田は肩を震わせ声も振るわせて「はい」と神妙に答えたが、失礼しますとその場を離れれば完全に乾いているハンカチをジャケットのポケットにしまい込んだ。 「……あーあ、やりすぎちゃったなぁ。でもこれで終わったわけじゃないし……」 背筋を伸ばし、颯爽と事務所へ帰っていく。 ☆ 案内されたバンケットルームでの食事が始まる。 さすがは老舗の高級ホテルだ、間違いなくおいしい。陽葵は頬が落ちるとはこのことだと思った。 試食だ、フレンチ料理と会席料理が同時に味わえる。その分1つ1つの量は控えめだが比較にはちょうどよかった。メインデッシュは数種類から選べるとあって、それらを食べれば本当に満足だった。
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