⑧ブライダルフェアにて

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「さあ、どうなんでしょう。親関係ならもう連絡は行っているので大丈夫だと思いますけど」 「招待状も出してしまえば一安心です! むしろ2か月前くらいはなにもすることがないくらいにして、当日までワクワクするだけというのもいいですよ」 宇野なら話がトントン拍子に進みそうだと思ったのは、前の経験が悪すぎるからか。心と体の距離感もバグっていない。 「招待状や席次表などのペーパーアイテムも、こちらにあるテンプレートをご利用なさるなら早いですが、思い入れのあるデザインや素材ですとお時間をいただきますし」 「デザインねえ」 尚登は陽葵の髪を指の背で撫でながら言う。 「ちょっと考えてみるか」 そこで考えようと思うのが凄いと思った、陽葵はどうもそちらの方には才能がなかった。 「担当を代えていただいてよかったです、安心してお任せできます」 尚登が素直に気持ちを吐露すると、宇野はにこりと微笑んでから口元にファイルを添え、わずかに体を近づける。 「あの。ここだけの話にしてくださいね。私がこちらに来て2年なんですけど。菊田さんの担当の方は2組、キャンセルしているんです」 「……キャンセル?」 宇野は小さく頷いた。
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