⑧ブライダルフェアにて

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「本当に申し訳ありません。近隣で一番人気は氷川神社です、ご祭神のスサノオノミコトとクシイナダヒメノミコトは夫婦なので縁結びの神社として有名です。あと有名なところですと愛宕神社や東照宮とありますが」 「へえ、りぃ、どうする?」 覗き込むように聞かれ、陽葵はわずかに頬を赤らめ答える。 「ごめんなさい、土地鑑がなくて……すぐ近くなんですか?」 「いずれもお車で10分ほどの距離です。当館で準備をされ移動となります、列席される方々も同様で、マイクロバスで送迎いたします」 なるほど、これが三宅がやりたい『馬車での移動』なのだと判った。さすがに都内では馬車はないが、華やかな衣装を着て移動するなどちょっと気持ちが高ぶってしまう。 「はい、あの、少し、考えたい、です……」 「ぜひぜひ! 念のため神社の予定も確認はしておきますね。あ、あと事前撮影の説明も、していないですよね」 ファイルを見ながら言った、引き継ぎはしているが菊田は聞いたことしか答えてくれないような状態だった。 「ないですね」 尚登がにこやかに答える、宇野もため息交じりに「はい」と応じる。
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