⑧ブライダルフェアにて

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☆ まずは神社に案内された。宇野が錠の束から見つけた鍵を、重厚な木の扉の鍵穴に差し込み開ける。扉の向こうは真っ暗だった、宇野がお待ちくださいと言ってひとり中へ入ると順々に照明が点く。入ったすぐの場所は前室のようになっていて、そこの壁にたくさんのスイッチがあり操作を終えた宇野が手を離す、反対側にある白木でできた障子は開け放たれ、中を見せてくれていた。 黒光りする床が奥まで続いている、正面の祭壇は高くなっており階段でつながっていた。ぼんぼりに明かりが入っていないのが本日はお休みなのだと判る。胡床(こしょう)と呼ばれる折り畳みの椅子がたくさん並んでいるのが賑やかな様子を示していた。 「どうぞ奥へ。階段の手前までなら入ってくださって大丈夫です」 ふたりは手を握ったまま進んでいく──陽葵は早まる鼓動を感じた、予行練習というわけでもないのに緊張と喜びを感じているのでは、本番はどうなってしまうのだろう。 「教会ですとステンドグラスから陽光も注ぎますので、昼間の晴れた日などとても綺麗なんです。こちらは窓はないですがその分お天気の影響はないのは利点です」 宇野の言葉に陽葵は天井を見上げる。光天井は全体的に明るく、場合によっては無機質に感じるが、こちらのものは柔らかい明かりが注いでいた。 「こちらにはアマテラスオオミカミが祀られています、ちゃんとした神社なんですよ。なので七五三などの祝いも受けております、当館で着替えや撮影、会食なども一緒に済ませられるので喜ばれています」
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