⑧ブライダルフェアにて

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宇野の説明を陽葵はうんうんと聞いていた。 「当日はこの階段を上がり、祭壇の前まで行き神主が祝詞を読み上げます。その後の流れは、巫女の舞、誓いの盃、指輪の交換、新郎新婦の誓いの言葉、そして最後はおふたりと親族代表様が玉串をお供えして終了となります」 神前式ならではの名称はあるが、あえて判りやすいよう一般的な言葉で説明する。 「どうぞ、胡床に座って、ゆっくりご覧ください」 言って宇野は出入り口まで下がり、ファイルを胸に抱えきりりと立つ。座るよう勧められたがふたりは立ったまま祭壇を見たり周囲を見回した。 普段あまり見ることがない神社内部だ、それをじっくり見ていれば忘れてしまうが、当日はこの舞台に立ち、皆の視線を浴びるのだ。陽葵は緊張感を覚える。 「……大丈夫かな、転んだりしそう」 失敗などしないかと不安になったが、尚登は笑い飛ばす。 「当日は介添えもいる、多少の失敗は愛嬌だろ」 数分間神社を見学させてもらい、その場を離れた。 「美粧室に顔を出しておきましょうか。御衣裳も陽葵さまはレンタルでよろしいですか? それならドレスサロンにも」 神社に鍵をかけ言う宇野に陽葵がはいと答えた時、周囲がざわめくのを感じた。見れば廊下の向こうをウェディングドレスを着た女性が歩いている。
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