⑧ブライダルフェアにて

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自らスカートの裾を持ち上げてまで颯爽と慣れた様子で歩くのはモデルだからか。あとから続いてくる白いタキシード姿の男性も特段女性に気遣うことなく、緊張した様子もなくついていくのは、恋愛感情などないからだろう。 それでも美しい新郎新婦だった、陽葵もわあ、と声を上げてしまう。 「間もなく挙式ですね、ちょっとくらい、覗きますか?」 宇野が勧めてくれたが、陽葵は首を横に振った、目の保養にはいいかもしれないが自分は神社式で挙げるのだ、余計な知識は入れたくなかった。 宇野は頷き案内する。ドレスサロンなど、裏方になるフロアはひとつ下の階にあった。 宇野がふたりの名前を告げ、挙式の日時や形態を知らせる。 「和婚ですね。こちらになります」 奥へと誘われる、道中白いウェディングドレスやカラードレスがあったが、それと比べるとずいぶん数が少ない。 「白無垢が主体ですが、最近は色打掛の方も多いですよ」 衣桁やタンスに入った物を示しながらスタッフが教えてくれる。 「白無垢が、いいです」 国井夫妻は伝統に乗っ取った式を希望すると思った。 「陽葵様にはお似合いだと思います」 サロンのスタッフが嬉しそうに言う。 「同じ白でも微妙に白さが違います」 こちらですとスタッフのひとりが引き出しを開け見せてくれる。 「織りや柄で変化がありますので、お好みのものがあるとよいのですが」
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