⑧ブライダルフェアにて

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織りは緞子や綸子、錦織などだ。柄については三宅にも教えてもらったと陽葵はうんうんと頷く、その柄が織りで表現されているのが美しかった。 「真っ白も美しいですが、裏地や小物で色を入れるのもいいですよ」 小物類は別の引き出しに収められていた、それを開き見せてくれる。小物は女性の和装の正礼装に使う末広や懐剣、筥迫である。色ごとにまとめられたものを見て、陽葵の心は弾む。スタッフは好きな色があるといいのですが言葉を添えてくれた。 「お召し物はシルクから化繊までさまざまありますが、こちらでは価格に変動はありません。お好みのものをお選びください」 「えと、今、選んだ方が……?」 「決められるならば構いませんが、本日はカタログをお渡ししましょう、もらっていないですよね?」 宇野の言葉にはいと答えれば、サロンのスタッフがそれを持ってきた。 「店頭にはないものもありますから選び甲斐があります。これはというものを見つけたらご連絡ください、試着をすればイメージも湧きやすいですから」 やや厚みのあるそれは尚登が受け取った。 「今日も、ちょっと着付けをしてみましょうか」 宇野が言うが、陽葵は戸惑う。着物の着付けなど手間ではないのか。 「簡単にですよ、お洋服の上からです」 「見たい、着てみ」 尚登に言われて皆が動き出す、陽葵は一段上がった、広さが3畳ほどもある試着室に通される。 「尚登さまの挙式の衣装は、どうなりなした?」 宇野が笑顔で言うのに、尚登は眉間に皴が寄ってしまう。
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