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「既製品を買うのでしたらいいのですが、ドレスならばフルオーダーでもひと月ほどで出来上がるようですから、それほど急がなくても大丈夫だと思います。お着物ですと、もう発注をしたほうがいいと思います、経験上になりますが」
宇野の言葉に尚登は内心舌打ちをする。そんなこと菊田は言っていなかった。
ふたりが会話をしている脇で、陽葵の着付けが進む。服を着た上からだ、カーテンも閉めずに行っている。
少しずつ花嫁の姿になっていく陽葵を見ていた。髪も無造作にヘアクリップで上げただけだ、小物もないがそれでも唯一無二の花嫁である。
真っ白な打掛に袖を通し、脇を結び留めるとスタッフが尚登の方へ向くよう示す。陽葵が素直に振り返ればスタッフは打掛の裾を持ち上げ手伝った。
別のひとりが嬉しそうにどうでしょうと尚登に声をかける。
「似合う、かわいい、最高」
目を細めて言われ、陽葵はなんとも恥ずかしい。
「新郎さまの身長がおありなので、綿帽子も映えますよね」
被ってみますかとスタッフが綿帽子を差し出す、花嫁しか見つけることができないそれを見て、陽葵は頬を赤らめながらもはいと答えた。
少しばかり膝を折り身を小さくすると、そこへスタッフが綿帽子を広げ被せる。
「ごめんなさい、ちょっと小さいですね……別のものを」
「あ、いいです、これで」
試着の更に試着である、当日きちんとなればいい、というより綿帽子にもサイズがあるのだと初めて知った。
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