⑧ブライダルフェアにて

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その姿を見たいと陽葵はまた反転する、試着室の壁のひとつは一面鏡張りである、それに自分の姿を映し出した。 即席だが純白の花嫁がそこにいる、それが自分であることに自然と笑顔になった。 「いいねえ」 尚登が背後に立ち、陽葵のすぐ耳元で言った。 「大丈夫かな」 自分がこんな格好をしていいのかと思い、陽葵が恥ずかしそうに言えば、尚登は微笑んだ。 「めっちゃ似合ってるし、めっちゃ可愛いし、惚れ直す。誰にも見せたくないくらいだし、このまま持って帰りてえ」 完全な惚気に、宇野もスタッフもクスクスと笑った。 「お着物に限らずですけど、織りや素材で着心地や重さが変わりますから、いくつか腕を通してみて、サイズだけではなく着心地も確認されるといいと思います、お時間の許す限りになりますけど、納得のいくまでいらしてください」 ドレスサロンのスタッフの言葉に、ふたり揃って頷いた。 「打掛だけ変えてみましょうか。雰囲気が判るかと」 数人のスタッフが総がかりで様々なタイプの打掛を持って来て、次から次へと陽葵に着せる。陽葵はなすがまま、言われるがままに着るだけだった。 そうして何着もの着物を着た、いいと思うものは尚登がスマートフォンで写真に残す。 やがてドレスサロンの外がざわざわしてきた、模擬挙式が終わり参加者がやってきたのである。
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