⑧ブライダルフェアにて

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支配人は手に持っていた紙袋を差し出す、中にはたくさんのお菓子やカタログ、記念品が入っているのはブライダルフェアの来場者にも配られるものだが、より高いお菓子やホテル名が入ったタオルが入っているのは、詫びの印だ。 「ありがとうございます、こちらこそよろしくお願いします」 尚登は紙袋を受け取り、陽葵の手を取りホテルを後にする。 その一部始終を見ていたのは、ロビーのソファーに座っていた浜松町で倒れていた男だ。陽葵たちがエントランスから出るとすぐさま立ち上がり、その後を追った。 「本屋さん、行こうかな」 陽葵が歩きながら言う。 「本屋?」 「やっぱり私は知識がなさすぎるから、どんな髪型があるかとか、ドレスの形とか……ブライダル雑誌を買って少し勉強しよう」 「今どきネットでも見られるだろ」 「そうだけど……思い出にも、なるかなって」 恥ずかしげに言う陽葵の肩を、尚登は笑顔で抱きしめる。 「よしよし、そういうことなら買いに行くべ」 尚登の賛同に陽葵はうんと明るく答えその顔を見上げた、見つめあうふたりの横顔を男は後を付けながら見ていた。 歩きながら本屋の場所を調べ入れば、目的の本はすぐに見つかった。それを持って浜松町駅近くのカフェに入り、横並びに座って冊子を眺める。 ワクワクした気持ちでページをめくるが、むしろ情報が多すぎて陽葵は迷ってしまう。 「……逆に、悩んじゃうな……」 「陽葵ならなんでも似合うって」
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