⑧ブライダルフェアにて

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陽葵が座る椅子の背もたれに腕を乗せ、空いた手はスマートフォンを操作していた尚登が無責任に言うが、その実尚登自身も調べていた、こんなのとその画面を見せれば、真っ白な白無垢に緩い洋髪でまとめた頭には大きな芍薬の花が5輪も飾られた花嫁がいた。 「わ……きれい」 なによりポーズを決めたモデルの花嫁の横顔に見とれてしまった。 「これも可愛いかな」 別の一枚を見せる、それには大きなリボンがあった。 (尚登くんは、こういうのがいいのか……) 自分に趣味というものがないが、尚登が好きならそれにしたいと思った。飾りは小さいより大きいものが好みなのだろうか。 「着物の柄もいろいろだったな、まあ誰も見てないって」 「またそうやって、身も蓋もないことを言うんだから」 確かに誰も気にしたりはしないだろうが。 「どうせその時ばかりだし、みんな服なんか見ちゃいねえよ。みんな陽葵を見てる、服なんかどれも同じだ」 それはそれで、そんな風に言われては緊張してしまうではないか。 「イチから作ろうっていうなら素材から悩むけどな。でもマジで時間があれば反物から作ってもいいよな。全部発注。欲しい柄全部入れる」 「もう、金持ちの発想だなあ。反物からなんていくらかかるのよ。今だってどれにしようか決まらないのに、反物のデザインからなんてますます決まらないよ」 「確かに。でももっと時間があればやってもいいな」 待望の結婚とあって、早々の挙式になったのが仇となった。
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