①尚登と良

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間近で言われた言葉に陽葵の返答は頬を赤らめただけだった。 「京都観光も兼ねて、なんて言って呼び出して、人数減らせらねえかな。海外挙式に持ち込めればそのままトンズラだな」 とんでもない言葉を無邪気な声と表情で言って、尚登は風呂行ってくると最後に陽葵の髪を撫でて風呂場へ向かった。 (海外で挙式して、そのままトンズラ、か) 尚登の言葉を反芻し、ため息が漏れる。そんなことできるとは思えなかった。尚登は留学の時も本当ならば高校だけという約束を反故にして大学院にまで進んだような男だ、そんなことができるのは実の息子であり、わがままも言える環境で育ったからだ。 陽葵が立場上、あれこれ意見することなど憚られた。いくら尚登の希望があっても社長の指示があれば従ってしまうだろう、尚登を説得しろと言われればそれも受け入れてしまう。 思い、再度ため息が漏れる。 (尚登くんといたいし、結婚できるのは嬉しいけど……社長かあ……) 尚登は社長職は継がないなどと言っているが、本当にそんなことができるのだろうか。
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