⑨三宅さくらの恋心

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ナナオやナナセ、最悪、ナナタロウとかシチノスケなどと古風な名前まで出して可能性を探るが、もちろん答えなどない。 「それでいったら、やっぱり副社長が30にもなって独身って、そりゃ親や周りは心配ってなるわね」 いくら適齢期が上がったとはいえ、三宅自身親からチクチク言われてはいるのだ。 「それをよくまあ、陽葵ちゃんを見つけてくれて、私としても嬉しい限り。陽葵ちゃんに恋人ができるなんて」 義理の母からの仕打ちのせいで、陽葵は対人恐怖症と接触恐怖になっていた。そのような診断を受けたわけではないが陽葵は自分を守るために、極力人を避けて生きてきた。その特性に気づき距離を保ちながら接してくれたのが三宅だ。学生の間は勉強に打ち込んでいればよかったが、社会人はそうはいかないと思っていた陽葵の唯一心の許せる存在だった。 「副社長ってめっちゃ草食系っぽいから、そういうところが合った感じ?」 三宅は陽葵の趣味が博物館や美術館巡りであることを知っている、知的な趣味が合ったのかと推察した。 そして陽葵だって草食系や肉食系の意味は知っている。 「草食系……ああ、そうですね」
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