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尚登は陽葵の手の平ごと頬にキスをする、陽葵はきゃあと声を上げるが拒絶の声だ。
「俺は運命って信じてるよ」
先ほどはワンナイトラブもアリと宣言した良が静かに声を上げる。
「条件じゃない、理由なんか要らない、出会うべくして出会って惹かれあう。好きだと自覚するのに1秒もかからないこともあれば、何年もかかることもある。自覚すれば、そこから先は流されるまま──いいね、幸せな時間だ」
誰も確認しないが、良もそんな恋をしたのだろうと想像した。
「で。結婚式の準備はだいぶ進でんの?」
良は急にいつもの調子に戻して聞いた。
「え、ああ。まあ、それなりに」
尚登が答える。
「でもドレスが決まらねえんだよな」
その言葉に陽葵のみならず、相談に乗っている三宅も頷いた。
「欲しいデザインが見つからない感じ? どれを着てもいいなって思う感じ?」
「後者だな。どれも似合ってかわいくて」
こんな時にまで惚気だ、三宅が呆れる。
「うーん、俺が見立ててやってもいいけど尚登に怒られそうだし、専門家にアドバイスをお願いしてみる?」
「専門家?」
ドレスサロンやショップの店員も十分専門家だろうと尚登は思うが。
「テーラーなんだけど、ドレスの制作も請け負ってるんだ、うちの式場のドレスも年に数着、作ってくれてる」
「えっ、良、結婚式場、経営してるの?」
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