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言いながら今度は赤色の布を乗せる、橙色同様、陽葵に似合う色ではないと判った。
「もちろん色の彩度や濃さがいろいろですからね。ここで「もう一生オレンジと赤は着ない!」とは思わないでください」
藤宮は笑顔で言って今度は緑の布を乗せた。
「いがかでしょう、暖色系より肌になじみませんか?」
「──はい」
眩しい色を見ていたせいだろうか思うほど、自分の肌に合っていると思った。藤宮は今度はピンクの布をどけ、青と紫も一緒に乗せる。
「ああ、思った通りだ、紫がお似合いだと思います、どうでしょう、尚登さま」
一緒に鏡を覗き込めば、尚登も確かにと思う。
「緑もいいですが、青も……うーん、でもやはり紫でしょうかね。待ってくださいね、一口に紫と言ってもいろいろですから」
言うと店内をウロウロし、様々な紫を集めてくる。ふたつを抱えて作業台に戻ってきて元々あったサテンの布地を乱暴にどかして置くと、再度棚へ向かう姿を見て尚登はついていき手伝った。
詰まれていく布を見て陽葵は確かにと思う。ピンクに近いようなものから黒に近いものもあるが、全部『紫』だ。
「かつては一番高貴な色とされた紫です、ぜひこれにしましょう」
陽葵を立たせ、今度は体に巻き付けて見せる。首より下に布を巻き付け背中でクリップで止めて、陽葵は鏡を見、藤宮は少し離れて見定める。
「うん、なるほど、先ほどは青もお似合いだと思ったので、こちらが一番よいかと思いかと思います」
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