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20枚の布を試した、外すたびに山に分けていたがそれは陽葵に似合うかどうかで分けてくれていたのようだ。その山のひとつから柔らかい色合いの赤紫色の布地を取り上げる。
「オペラモーブという色になります。陽葵さまがお好きなピンクに近いカラーですし、いかがでしょう」
「……素敵です」
確かにピンクというには青みが強いように見える、それがいいのだろう。自分に似合う色があるのだと初めて知った。
「よかった! では是非こちらの布をお持ちください。せめて近い色が見つかることを祈っています」
言うと藤宮は大きな布切狭を手に取った。
「えっ、切っていただくわけには……!」
「大丈夫です、布も端から端まで使うわけではありませんから、これくらいでしたら」
言って10センチ四方ほど切り出す、陽葵は受け取ったはいいが呆然としてしまう。
「次にドレスの形を決めましょう」
藤宮はすっかり楽しくなっていた。顧客の思い入れのある服作りも楽しいが、逆になんのアイデアもなく相談されるものもいいものだと思う。
ドレスの形もどれが似合うのかが判らない、それを聞いて藤宮は先ほど同様、実際に布を巻きつけて提案をした。
陽葵は女性としては平均的な身長でやせ型だ、ならばどんなスカートでも似合うと教えてくれる。
ふんわり広がったウェディングドレスの定番、プリンセスラインから。
洗練された大人らしさが際立つマーメイドライン。
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