②初参戦

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座席を戻すと助手席に乗るよう、陽葵の時と同様にルーフを覆い手で尚登をいざなう。尚登はお邪魔しますと助手席に乗り込んだ。良はそのドアを閉め、運転席へ回る。 「ずいぶん古い車だと思うけど、きれいにしてるな」 あまり車に詳しくない尚登にも判る、最近見かけるタイプではなかった。 「そうそう、俺が生まれる前に売ってた車だね、尚登よりも年上だな」 日産、R32と呼ばれるスカイラインは平成の初めに販売されていた車だ。何度か廃車になるほどの憂き目にあっているが、その度に同じタイプの車を探しレストアして愛用している。 陽葵はへえと呟き車内を見回した、内装からはそれほどの古さは感じないが。 「あれこれ金はかかるけど、まあどうしてもって手に入れた車だから、かわいがってはいるかな。あ、運転してみる?」 シートベルトをしようとしていた手を止めて聞いたが、尚登は手を振り辞退する。 「そんなに大事にしてる車のハンドルは握れないわ。大体、マニュアル車なんてもう何年も乗ってねえな、クラッチ操作なんか忘れたね」 尚登の言葉に陽葵も内心頷いていた、もっとも陽葵はオートマ限定免許である。 「ちょっと乗れば思い出すけどね。まあ、それはまた今度で」 クラッチペダルを踏み、ギアをニュートラルから1速に入れパーキングブレーキを下ろす、車はゆっくりと走り出した。
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