⑪ストーカー

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丁寧な菊田の言葉に陽葵はむしろ焦る、熱心に電話をくれていたのはやはり熱意があるからだと思った。 「いえ、土日でしたら伺えます」 尚登は大丈夫だろうかと思ったが、衣装選びだけならば自分だけでも構わない、むしろ尚登はもう決まっているのだから自分だけ行けばいいんだと思い直す。 (似合う色も教えてもらった、それを基準に考えれば、きっと大丈夫) 心の中で決意する。 『基本的にはドレスサロンの者と相談してくださればいいのですが、できれば宇野とわたくしもお手伝いさせていただきたいですわ。今度の土曜日でしたらお時間がありますので、ぜひいかがでしょう』 宇野の名前も出て陽葵の警戒心はすっかりなくなっていた、よろしくお願いしますと時間も決め、ドレスサロンに直行してくれて構わないと教えてもらい、電話を切る。 席に戻れば尚登が声をかけた。 「遅かったな」 「うん、ごめん。カラードレスが決まったなら、白無垢も決めてしまいましょうって言われて、相談してた。土曜日の13時に行くことにしたの、尚登くんも行く?」 「もちろん」 「なんかごめん、あっちこっち引きずりまわしてるよね」 白無垢とてブライダルフェアの時に決めてしまえば、また足を運ぶ必要はなかったのに。
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