②初参戦

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「相原、聞き覚えがあるん……あーっ! 『Azur(アズール)』の社長!」 指さし叫べば、聞こえた皆がおおと声を上げる、それだけで良がいかに有名人か判った。 「ええ、どういうご関係!?」 接点などなさそうなふたりだ、その関係が気になった。皆が異口同音に聞いてくる。 「えーっ、ちょっとやばーい、ふたりとも見目麗しすぎでしょー!」 「あ、ねえねえ! 写真撮ってもいいですかぁ!?」 ひとりが言えば、ひとり、またひとりと、いそいそとスマートフォンを取り出した。尚登は断ろうとしたが、良はいいよと気軽に応える。断ろうとしたのは良を誘ったのは自分で騒ぎに巻き込んでもと思ってこのだが、良がよいなら構わない。良は自然ながらも撮られることを意識したポーズを取る、それが良の社交性だと判った。 良は尚登に体を寄せ顔まで近づける、女性たちはきゃあきゃあと声を上げていた。それにさらにサービスしようというのか、今度は尚登の肩に腕を乗せ見栄を切る、尚登すら決めた表情を見せるのは、いっぱしのモデルだった。カメラを意識した笑顔や、すました顔など、完全に慣れた様子なのはふたりともだ。 鳴り響くシャッター音の中、声がする。 「尚登くん?」
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