②初参戦

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ヒト型の的までは60メートル、そんなものに狙いを定めるだけでもドキドキしたが、陽葵はハンドガンを両手で包みしっかりと握る。揺れる銃の照門と照星を合わることに集中していたが、ひとつ空けた隣の的が音を立てて揺れたのが見えた。 頭部の眉間だ、尚登は感嘆の口笛を吹く。 「すげー、本当に初めてかよ、やっぱタダもんじゃねえな、良」 「たまたまだよー」 笑顔で言いながら数発試し撃ちをし、別の銃も試す。 (──ふむ。しょせんはおもちゃか) いずれも物足りないと言えば物足りない、軽すぎて狙いを外しそうだ。 (──って。初めてマグナム撃った時の事、思い出すわあ) むしろ重過ぎて狙いが定まらなかった、反動で腕が痺れたことすら懐かしい。 陽葵はトリガーに指をかけたまま動けない。 「うううー」 「そこまで硬くないだろ」 背後に立つ尚登が呆れ気味に言う。 「だって、水鉄砲だっていうならまだしも」 出てくるのは当たると痛いと言われるBB弾だ。 「まずは一発、撃ってみな」 尚登に言われても動けない、すると背後から尚登の手が陽葵の手を包み、代わりにトリガーを引いた。 「──わぁ……」 陽葵は声を上げた、銃の発射よりも尚登の手のぬくもりの方が嬉しかった。 「ほれ、今度は自分で。当るか当たらないかは二の次だから」 「うん」 尚登に手を支えられたまま、陽葵はその動作を行う。その間にも良のブースからはリズミカルに弾が発射されるのを感じていた。
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