②初参戦

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そんなこと、と思ったが陽葵は素直に尚登の背に手を伸ばしていた。指先だけだが。陽葵にはグローブがあり尚登の背にはプロテクターまであって体温も筋肉の動きすらも感じられなかったが、それでもそこにいると判れば確かに安心できた。 ほっとしたように微笑むのはマスクもゴーグルもしていて見えないが、良には判った。楽しくプレーしてくれれば一番だ。 (しかし、いいねえ。みんなゴリゴリに殺気立ってて) フィールドに散らばっているプレイヤーたちの居場所がはっきり判るほどだ。 (やってやるぜって感じがいい、映画でいうならヒーローだ。リアルならチンピラでももうちょい殺気は消してるぜ) 本当の命がけならではだろう、物陰から狙うにしてももっと息を殺して気配を消す。しかし今は遊びだ、相手もひとりでも多くの敵を撃ちたいのだ、その気配は賑やかだ。殺気の中にもワクワクした気持ちを感じ内心微笑んだ。それに引き換え尚登は比較的落ち着いている、もちろん心躍っている様子は感じられるが──対して陽葵の不安は変らず、ひしひしと感じる。 (少しくらい、成功体験をね)
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