②初参戦

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「んー、まあそういうところだからこそ、もっと明るく人が集まる場所にしてほしい、的なね。んで、いいのいいの、俺、そういうの得意なんだわ。実はお祓いとかやってる家系でね。ガチでヤバイ霊なら除霊して開設かな」 手を合わせ目を閉じて言えば、尚登はへえ、と声を上げた。 「お祓いか、俺たちもお祓いしてもらうか、なあ、陽葵」 隣に座る陽葵の手を取り、その指にキスをした。陽葵は恥ずかしそうにしながらも手を引っ込めたりはしない。 「お祓い? それはまた──」 どうした、とは聞かなかった。陽葵の笑顔の中に見える陰りに気づく。 (──なるほどね) 良はいわゆるテレパシーがあるわけではない。だが心を感じ取ることはできた、訓練したわけではない、完全に生まれつきのものだ。そしてその心も読みやすい者もいれば、全く読み取れない者もいる。今も目の前にいる陽葵はとても素直に感情が溢れてくるが、尚登は厚い壁に囲まれたように覗き込むことはできない、それももって生まれたものだと知っている。生まれながらに饒舌な者もいれば、物静かな者がいるのと同じだ。
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