②初参戦

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本来は良の父が継ぐはずだった家業だったが、結婚相手に母を選んだことで喧嘩となった。父は出て行くと見栄を切って母を選んだが、祖母は男子が生まれたらよこせと捨て台詞のように言った──そんなことできるものか思っていたが、弟は生まれたその日に病院から連れ去られ、父の妹の子として育てられた。もちろん父は取り返しに行った、だが、ならばお前が戻って来いと言われれば引くしかなかった。自分が戻れば良も良の姉も家に入ることになる、それが嫌だったからだ。 「弟はずっと修行もしてるから本物よ。俺は霊の事とか全く判んないんだけど、とりあえず、特別な呪文を教えてあげる。『ヨツノカミ』って3回唱えてごらん、きっと陽葵さんを守ってくれる」 「……よつのかみ……?」 陽葵は意味も判らず繰り返した。 「どういう意味ですか?」 「四つの神様」 実際には『四方を守る神』だがどうでもいい、そして四つの神様と言われたほうが陽葵にも判りやすかった。 「よつのかみ、よつのかみ──」 指を折りながら思わず繰り返せば、良がすっと指を陽葵の前に立てる。 「強力なおまじないだから、本当に必要な時以外唱えちゃだめ」
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