②初参戦

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良くも悪くも保守的すぎる。守るものが大きく、多い、ど派手に外れたことなどしない、できない、だからこそ末吉商事の盤石の強さなのだが。 「やるなら全く関係ないところで。成功しても失敗しても、親にも一族にも迷惑を掛けずにだ」 尚登の言葉を陽葵は黙って聞いていた、会社は辞めたい、社長を引き継いだらすぐに別のやつに譲るなどと言っていたが、それは本気なのか。 「まあ、伝統あると大変だね。友達が600年くらい続く家柄の跡取りなんだけど、尚登と一緒で一人っ子でさ、でもやっぱり跡なんか継がないって言って、現当主のおじいちゃんと顔合わすたびに大喧嘩よ」 癖毛の青年を思い出しながらクスクス笑ってしまう、あの青年も頑固だが、将来どうするのだろうか。 「それでいったら相原の家も1200年くらい続いてんだけどね。まあ弟は文句言わずにやってて偉いね」 「わ、1200年……平安時代ですか」 陽葵がすぐに言った、歴史は好きだった。 「そうそう、陰陽師もやってたみたい」 それでお祓いかと納得できた。 「弟さんは本当に文句ねえの?」 仲間を探すように尚登は聞くが、良はにこりと微笑む。 「たとえあっても、あいつが辞めたら閉じ込めてる魑魅魍魎が解放されちゃうから、やるしかねえんだろうなあ」 冗談とも本気とも取れない言葉に、尚登ははは、と笑いを浮かべただけだった。
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