①尚登と良

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「大体サバゲーなんて装備やらなにやら、必要でしょ」 「大丈夫、大丈夫、手ぶらで行ってもレンタルは十分あるし、もっとも良も背ぇ高いよなあ、多分サイズがないから俺の貸してやるわ。銃も好きなの貸すし──あー、今週末は仲人に会うんだ、面倒くせぇ……来週の土曜、どう?」 仲人も祖父の交友関係から選ばれた人だ。今どき仲人を立てるのも珍しいが、祖父や親からすると古式ゆかしく執り行ってほしいようだ。 「わ、仲人さん……着実に準備が進んでいるんですね」 あかねが思わず声をかけた、自らが働く会社の副社長の結婚式の進捗状況などこんな時でなければ聞くことはないだろう。 「まあ一応ねぇ……」 尚登はため息交じりに言う。見世物のように招待客も千人規模で呼ぶような結婚式、披露宴など冗談ではないと思っている、できることなら辞めたいが創業家の宿命と言われば引き下がるしかない。 ずっと抵抗はしていた、だからこそアメリカ留学もしたし帰ってこいとの声も無視して大学院まで進んだが、創業記念パーティーに参列しろと言われおとなしく従えばそこで取締役への就任を発表されてしまった。
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