②初参戦

39/44
前へ
/186ページ
次へ
「また近々行こうな、良のポテンシャルをもっと引き出さないと」 いたずら気味な笑みに、良も笑顔で勘弁してよと答えていた。 「じゃあ、おやすみ。特に陽葵さんは意識して今日は早く寝るんだよ」 陽葵が可愛らしい声ではいと答えれば尚登がドアを閉めた、きちんとしまったことを確認し良は車を走らせる。 途端に胸ポケットに入れたスマートフォンが震える、いや、『よろずや』にいた時からずっと鳴っていたのを無視していた。 これほど頻繁ならば、相手と内容は想像つく──面倒だがため息を吐き車を端に寄せ停めた。スマートフォンを手に取ればおやと声が出たのは、思っていた相手ではなかったからだ。 画面には『鈴木さん』の文字が出ている、事実上の良の上司といえる存在だ。 ため息を吐きつつ通話ボタンを押す。 『やっと出たな』 声はむしろ嬉しそうだった。 「なんだよ、今日は休みだって言ってあんだろ」 今日は今日とて鈴木には仕事があると聞いているが、断っていたのだ。 『私もそう言ったんだが、畑の奥さんがどうしても良に会わないと気が済まないと言い張ってな』 はあ、とため息が出てしまう。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加