②初参戦

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頬の熱さを布団に隠し、そのまま体を反転させた。そこには尚登のベッドがある。陽葵がひとり暮らしをしていたマンションに尚登が転がり込んだ時に買ったベッドだ、元の家主より上等なベッドにそっと手を滑り込ませてひんやりとするシーツを撫でた。 (早く尚登くん、出てこないかな……) 抱き締められたい、がっしとした熱い腕に。触れたい滑らかでわずかに汗をかく素肌に──想像してごくりと息を呑んでいた。シーツや枕を撫でながら、長く感じる時間をじっと待っていれば、尚登がようやく出てきた。 「んだよ、テレビも電気も点けっぱかよ」 笑顔で呟き、ローテーブルに置かれたテレビのリモコンを操作して消した、陽葵はまだ起きていることをアピールするために寝返りを打つ。 「なんだ、起きてたのか」 「こんな時間じゃ、眠れないよ……」 陽葵の答えを聞きながら尚登はキッチンへ向かう、ウォーターサーバーから水を注ぎ一気飲みした。 「とはいえ疲れただろ。(はよ)寝ろ」 フル装備ならば全部で十キロ以上になる、度々休憩を入れるにしても何時間も駆け回り、普段ない姿勢で待ち構えることもある。しかも陽葵は志願して始めたわけではない、その緊張もあれば疲れは尚登が初めてプレーした時は段違いだろう。
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