③大切なもの

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「ありがと、嬉しいわ。でも私も和装だったけど、かつらだったから全部は使えなくて飾り櫛を挿しただけなの」 かつらについていたものを外してもらい、代わりにつけたのだ。 「陽葵ちゃんも無理に使わなくても全然大丈夫だからね」 「いいえ、こんなに素敵なの使いたいです……っ、結婚式場で相談してみますっ」 希美がありがとうと答えれば、尚登が余計なことを言う。 「そもそも和式とは限らないし」 言えば希美はまあ、と声を上げた。 「国井さんも、神社がいい、そうしなさいって言ってたじゃない」 言われて尚登は「け」と声が出た。 仲人を引き受けてくれた国井夫妻だ。会話の流れではあったが、希美たちが結婚式を挙げた都内ホテルでいいじゃないか、あそこなら皆も知っているし行きやすいなどと言っていたのだ。 陽葵は先週会った国井夫妻を思い出し、胸が苦しくなる。
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