④ホテルにて

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④ホテルにて

だが、問題は翌日、起きた。 副社長の執務室で仕事をしていると、社長である仁志がやってきた。 「尚登、結婚式場なんだが」 なんとも申し訳なさそうに話し始める。 「国井さんが話を付けてくれた、港区の玉響館(たまゆらかん)だ」 聞いた瞬間、尚登は「はあ?」と声を荒げ手にしていた書類を放り出した。 「なんで国井さんが決めんだよ!」 すっかり父と祖父が相談しているものだと思っていた、それならば従おうと思っていたが、国井など尚登からすればなんの縁もゆかりもないのに。 「俺も会長も挙式した場所だし、いいだろうってな。まあ、どこでもいいじゃないか」 「どこでもいいなら俺たちに決めさせてほしいね!」 「そう言うな。ホテルの営業自体は長くて歴史はあるし、建物自体は数年前にリニューアルしてきれいになっているし、ね、陽葵さんも──」 「りぃに聞くな!」 良くも悪くも人に意見をしづらい性格だ、こんな時に聞けば「いいですね」としか言わないことなど判り切っている。それで言質を取ったなどと言われたくない。 「良と決めていいって言ってたじゃねえか」
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