④ホテルにて

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「そうは言ってもだろう。国井さんが橋渡しをしてくれたのに無下にはできないし、俺も玉響館はいいかなとは思っていたんだよ。場所を押さえただけだと言っていたよ、日取りやなんかはお前たちが決めればいいんだ。今日、早速ユートリアさんの帰りに道に少し顔を出してひと言挨拶に行こうと思うんだが」 「い・や・だ」 尚登は抵抗するが、仁志も慣れたものだ。 「じゃあ、俺だけ行くが」 「判ったよ」 イライラしながらも応えた、式の内容で余計なことを入れられたくはなかった。 「じゃあ、そろそろ出発だな。寄り道の件、忘れるなよ」 言われて陽葵と秘書の山本が判りましたの意味を込めて深々と頭を下げた、尚登だけは不機嫌だ。 「んだよ、良との話も進んでたのに」 とはいえ、やりたい、オッケー程度だ。詳しい話は会った時にという感じで、それも急いではいかなかった。 「大変ですね、副社長というのも」 山本が他人事で言った、尚登は小さく舌打ちをする。 「私はどこでもいいよ、尚登くんがいるなら」 老舗ホテルの名に及び腰にはなるが、尚登と一緒ならば乗り越えられそうだ。 「あー、マジで見世物になるの、勘弁だなー」
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