④ホテルにて

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なるほどと思った、挙式のイメージが湧くかもしれない。すでに会場が決まっていてもそういうものに顔を出してもいいのだろうか。 「いいんだよ、披露宴なんかしなくて。陽葵とふたりで式挙げておしまい。あ、山本さんは参列してくれよな」 コートを手に取りながら言う尚登に、山本は嬉しそうにいいんですかと聞いていた、陽葵もうんうんと頷く。山本は命の恩人のような存在だ、尚登にいきなり自分の秘書になれと言われ勤めていた経理課から連れて来られた、その日から手取り足取り秘書の心構えを優しく教えてくれた。山本のような人でなければ、とっくに逃げ出していたかもしれない。 「あと三宅さんとか斎藤さんとか」 三宅は陽葵が経理課で仲がよかった女性だ、斎藤は設計課の女性社員で近頃トラブルに巻き込まれ、尚登が率先して手を貸した。ふたりの名に陽葵は笑顔になっていた、友達はいないと思っていたが親しい人はいたではないか。 「あとは良は来てもらおう、それと村上さんもいるじゃん。ああ、斎藤さんに来てもらうなら、『Geborgenheit(ゲボーゲンハイト)』の影山さんにも声を掛けよう」 そんな計画に陽葵はワクワクしてしまう、意外にも参列してほしい人は多いではないか。
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