④ホテルにて

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「今後のことは尚登たちと相談してください、概ね全部尚登に任せますので」 本当かよ、概ねとはどこまでかと思ったがこの場ではにこにことしてやり過ごす。 「承知したしました、今度いらっしゃる時までにこちらの担当者も決めておきます。いつがよろしいでしょうか」 胸の内ポケットから手帳を取り出しながら言う。 「いますぐでは決めかねますか、後日改めてご連絡をいただければ」 一緒に取り出した名刺入れから名刺を取り出し尚登に渡した、尚登も名刺を手にしたが、そこに自分の携帯電話の番号を記す。 「今週末でもいいでしょうか、土曜日に伺います」 尚登が言えば、支配人は大きく頷いた。 「お待ちしております、お時間のご希望はございますでしょうか」 「何時でも大丈夫ですが、では13時で」 そんなすり合わせを終え、地下の駐車場に戻る。 「はあ、マジ、こんなところかあ」 「こんなところとはなんだ」 エレベーター内での尚登の言葉に、仁志が怒る。 「いや、いいところだよ、それは間違いなく」 リニューアルしたばかりの老舗ホテルだ。格式があり、設備も万全でこの上なく瀟洒で立派である。
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